今から20年以上前の経験です。
知人の中国人に肖像画家がいました。
一度自宅に招いた時に、過去の作品の写真を見せてもらいました。
その頃は、中国からさまざまな方面の人材がぼちぼちと来日していた時期だったのです。
その人の画風は、実際の人物にそっくりに描く、いわゆる細密描写なのですが、写真と全く同じというわけではありません。
見せてもらった写真の中で、自身の奥さんの肖像画が一番印象的でした。
光沢のある水色のドレスをまとい、椅子に座っているポーズだったのですが、とても雰囲気があり、彼の奥さんに対する愛情があふれる作品でした。
私が「素敵な奥さんですね」と言うと、彼は「この絵は、実際の彼女と少し違っています。
」と笑いました。
さてこの滅多にない機会に、私の主人は、彼に私の肖像画を描いてくれるように頼みました。
私は何だか気恥ずかしく、最初は断ったのですが、結局お願いすることにしました。
絵画を購入するのは初めてだったので、価格が気になりましたが、画材や額縁を併せて25万円でよいという返事でした。
その画家は日を決めて、私の写真を撮りに来ました。
私は気に入ったドレスを着て、入念にお化粧をしました。
部屋の一角にダイニングの椅子を置き、私がそこに座ると、その画家は数枚程写真を撮り、帰って行きました。
私がモデルになったのは、その時だけです。
3、4カ月で出来上がるということでした。
出来上がった私の肖像画を見ると、自分はこんな風に見えるのか、と改めて思いました。
写真を撮った部屋とは違い、背景は全体にマッチするようにアレンジしてありました。
最初描いてもらうのをためらいましたが、今となってはとてもよい記念になったと思っています。